208212 ランダム
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只今思案中

只今思案中

リュウの雪遊び

ちょっとしたいたずらを目撃して思いついた妄想です。


守屋家のマコト、リュウ、二人のおぼちゃんにとって今年のお正月は、
マコトの体調がよかったこともあり、この上ないくらい幸せなお正月でございました。
普段はあまり在宅しないお父上とお年玉にいただいたレコードを蓄音機にかけたり、
二人して凧揚げをしたり、シロと雪原を駆け回ったり・・・
本当に仲のよいお二人でございました。
お二人の様子をごらんになっていた奥様も本当に幸せそうになさってました。

ただ、その疲れが出たのか七草粥をいただいた頃からマコトお坊ちゃまが微熱を
出されるようになり、お二人で遊ばれるお姿が見られなくなってしまいました。

ばあや「リュウおぼっちゃま~どちらにいらっしゃいます~?りゅうおぼっちゃま~」
   ・・・・・・・
ばあや「どちらにいらしたのかしら?鏡開きのお餅でおやつにおぜんざいを思ったのに
     ああ、そこにいらしたのですか。
     あらあら、たくさん雪の玉をつくられたのですね。
     手が冷たくないですか?しもやけになりますよ。」
リュウ「おにいちゃまと雪合戦をするんだ~お熱が下がったら、すぐ遊べるように
     たくさん作ってるんだよ。」
ばあや「そうですね~マコトおぼっちゃまはお熱が下がっても、
     雪遊びはできないですよ。冬の間はお外には出ない方がいいって
     お医者様がおっしゃってましたからね。
     さあさ、おぜんざいができていますよ。ねえやがお餅を焼いてますからね」
リュウ「・・・・・・」

その夕刻、ねえやがマコトの愛犬シロにえさを運んでいくと
寒風吹きすさぶ中、シロは小屋に入らずにキュンキュンと悲しそうな細い鳴き声を
出してたたずんでおります。

ねえや「シロ、どうしたの?寒いのに小屋に入らないの?
     きゃ~何?・・・誰ですか?こんなかわいそうなことをするのは~」

ねえやがシロの小屋を覗き込むと、小屋の中にぎっしりと雪が詰められているではありませんか・・・

ねえや「ばあやさ~ん、シロの小屋が~~」
ばあや「何ですか?大きな声を出して。おぼっちゃまがたがびっくりなさいますよ。」
ねえや「シロの小屋にぎっしり雪が詰められていて、シロが小屋に入れなくて・・・
     誰かしらこんな気味の悪いいたずらをするのは・・・」
ばあや「どれどれ、あらら~シロ、かわいそうにね~あら、これは・・・」

ばあやは昼間リュウが雪遊びをしていた中庭を見にいきました。

ばあや「・・・やっぱり。リュウおぼっちゃまったら、どうしてあんないたずらを・・・」

すぐさま、ばあやはリュウの部屋へ行き、本を読んでいたリュウの前に座りました。
しもやけになりかかって赤みがかった小さな手を暖かい手で包み込むようにして、
ばあやはやさしい微笑をたたえながらリュウに聞きました。

ばあや「おぼっちゃま、シロが凍えて倒れてしまいました。
     お昼間、シロの様子は変わったこと無かったですか?」
リュウ「シロが?病気なの?」
ばあや「夕方になって寒くなってきたからでしょうか、
     声をかけても起き上がらないのですよ。
     リュウぼっちゃまがお散歩につれていってくださったのですよね。」
りゅう「ばあや・・・シロは小屋の外で倒れていたの?
     ばあや・・・ごめんなさい、僕・・・僕が悪いんだ。僕が雪の玉をいれたから」
ばあや「そうでしたか、リュウぼっちゃまの雪の玉でしたか。
     シロは大丈夫ですよ。
     今、ねえやが囲炉裏のそばで暖かいスープをあげていますからね
     でも、どうしてあんなことをされたのですか?」
リュウ「おにいちゃまは・・・おにいちゃまは冬の間・・・
     雪遊びしちゃいけないんでしょう?
     だから、雪の玉をいっぱい作って暖かくなるまで取って置こうと思ったの」
ばあや「マコトぼっちゃまに・・・」
リュウ「うん、僕・・・おにいちゃまと一緒に遊びたいの。
     おにいちゃまも雪遊びがしたいって思って・・・」
ばあや「わかりました。シロの小屋ではお日様があたったら融けてしまいますから、
     山小屋のシゲじいさんに頼んで氷室に入れてもらいましょうね。
     明日、新しい雪の玉を作りましょうね」
リュウ「うん、それなら春まで融けないの?大丈夫?」
ばあや「そうですね、少し小さくなるかもしれませんが・・・・
     夏まで融けないはずですよ。
     さあ、ぼっちゃま、シロが入れるように雪を出してやってくださいな。」

シロの小屋に向かって駆けていくリュウの姿を見守りながら
ばあやは割烹着の裾で目頭を押さえるのでした。

ばあや「リュウおぼっちゃまったら・・・今度はおいたが過ぎるから旦那さまに
     叱っていただかなくてはならないかしらって思いましたよ。
     まさか、マコトおぼっちゃまのためにあんなことをするなんて・・・」

雪をかき出して冷たい手をして戻ってくるリュウのためにお湯を用意するばあやの姿が
台所の明かりの中にふわっと浮かぶ冬の夜・・・
明日リュウが兄マコトに作る雪の玉の為に・・・新しい雪が降り始めた。       



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